「適材適所」というこの言葉。建築現場での木材の使い分けがその語源なんです。天然木といっても樹種は様々。それぞれに利点と欠点があり、昔の大工さんにとって、それらを使い分けることは「常識」でした。
和服をしまうタンスは防虫効果の高い桐でこしらえます。桐は狂いも少なく湿度調整機能も高いため家具に適しています。固くて摩耗に強いケヤキは彫刻や家具に使われます。ケヤキは、かつて社寺仏閣に使われていましたが、今では、それ相応の材料確保が極めて困難であると言われています。このように、住宅以外でも適材適所に木材を利用しています。
実はこれらの天然木、集成材や合板の様に接着剤を一切使っていないから安全であるとは限らないのです。国産無垢材として定番の、スギとヒノキ。これらは、虫やバクテリアといった外敵から身を守るために、殺菌・殺虫効果のある天然の化学物質を放出しているのです。市販の殺虫剤は、その天然の化学物質の化学式を参考に開発されているのです。(ヒノキの放出するヒノキチオールの化学式は、C10H12O2。殺虫剤の主成分ピレスロイドの化学式はC10H16O2 です。)
虫の中枢神経を麻痺させる木の天然毒は、健康な人の身体にはこれといった影響を及ぼしません。しかし、シックハウス症候群や化学物質過敏症を発症した人にとっては、いくら天然でも、いくら少量でもまさに毒。すぐに症状が出てしまうでしょう。内装に杉やヒノキを使用した家に住むということは、原因物質を直接、毎日浴び続ける生活を送るということになってしまうのです。
健康的かつ耐久性の高い家に必要なのは、木の特徴に従ってバランスよく材木を選ぶことです。虫に強いヒノキは床下の土台に、強度も耐久性もありコストパフォーマンスに優れた杉は構造材に、人体に安全なナラやシンゴンを内装材にと、無添加住宅では、様々な天然木を適材適所で使用しています。