言わずと知れた、日本を代表する建築家、吉村順三の名作「軽井沢の山荘」。
木々の茂った森の中にひっそりと佇む片流れ屋根の外観です。計画としてはシャープな外観でありながらどこかやわらかい雰囲気なのは、斜面に馴染む方向への水勾配と、2階木造部分が杉板貼りだからでしょうか。
4間角の明快な平面でありながら、各部屋から望む周囲の景色は異なり、木々の表情を楽しむことができます。
1階はコンクリート造でメーンの居住スペースを持ち上げていて、2階からは足元が見えないので、まるで木立の中に浮いているような気分になるよう計画されています。
吉村順三氏はこの土地を訪れたとき、「空を見上げて、樹々の緑が目に入ったとき、この樹の上で、鳥になったような暮らしのできる家をつくろうと思いついた。」そうです。リビングの角に設けられた掃出し窓を全て開放したときの内・外の一体感、空中に浮かんでいるような感覚を想像します。
吉村順三氏の奥様はヴァイオリニストでいらっしゃるそうで、この山荘でもたびたび演奏会が開かれていたようです。山荘への入り口である玄関ポーチが広くとってあり、暖炉も完備した多目的に使える屋外テラスとなっています。
2階を支えるコンクリート部分が1.2Mほど跳ね出していて、庇の役割と音楽会の時は共鳴板の役割を果たしているそうです。ライフスタイルを重視したスペースを取り入れることは、日々の生活に大きな広がりをもたらします。
※写真は、吉村順三著 小さな森の家 軽井沢山荘物語より引用
(大塚)