前回の記事で、VOCを原因とするシックハウス症候群についてご説明しました。
シックハウス症候群は、医学的な疾病というよりも住宅由来の健康障害であるとの解釈ではありますが、国としても放置するわけにはいかず、VOCに対する指針を2002年に厚生労働省が掲げました。
2002年の指針では、13種類のVOCについて室内における濃度指針値を定めてガイドラインを策定しました。(13種類の物質については下の表をご覧下さい)
この後、建築業界ではこれらのVOCの使用を控えるようになりましたが、その替わりに別の新たなVOCを用いて建材を製造する動きが見られました。
それをうけて、国は2017年に濃度指針値を改訂して、そして新たに3物質を追加する検討を始めましたが、平成31年2月時点では、新たな3物質の追加は先送りされてます。規制する事そのものに高いハードルがある様です。(参考:平成31年1月17日 厚生労働省 シックハウス問題に関する検討会中間報告書)
このような国の動きがあっても、シックハウス症候群を患う方々は後を絶ちませんし、根絶に向かっているとは到底言えません。ある化学物質を規制すれば、別の化学物質が使われる「いたちごっこ」が、これからも繰り返されるのではという指摘もあります。
シックハウス症候群という社会問題の背景は、このような実情があるんですね。
※厚労省の定めた13物質の指針(表をクリックすると該当ページへ飛びます)
(次回は、平成25年に国が行った実態調査に興味深い結果がありましたので、ご紹介したいと思います)